ここでは、定期便をご利用いただいているお客様のもとを訪ね、そこにある暮らしや、花を飾る思い、それぞれがもつ植物の記憶や原風景をたどりながら、お話を伺います。

Here, customers who receive the subscription are visited, and conversations unfold around their daily lives, their thoughts on living with flowers, and the memories and early landscapes they associate with plants.

  2026.02.12

Kaoru Hiramatsu

今回訪ねたのは、定期便が始まった当初からご利用いただいている平松さん。 幼い頃の記憶や家族との思い出、この家での暮らしと、花や植物とともにある時間について、お話を伺いました。

花や植物は、これまでの暮らしの中でどんな存在でしたか?

父が植物、特に木が好きだったこともあって、子どもの頃から自分も詳しくなりたいなぁとぼんやり思っていました。小学校の自由研究では、近くの大きな公園にある木を調べて、自分なりに図鑑を作ったこともあります。「この木は何の木か見ただけで言えるようになったら、かっこいいな」と思っていました。
定期便を始めた直接のきっかけは、母が亡くなったことです。生前、母から「花を飾る心の余裕を持っておきなさい」と言われていて。その言葉を思い出して、花を家に迎えるようになりました。

小さい頃の植物との記憶や、自然に触れていた原風景があれば教えてください。

公園でシロツメクサの冠を作ったことや、摘んで家に持ち帰った野花が、すぐに萎れてしまったことなどを覚えています。きれいなだけでなく、その儚さも含めて心に残っている気がします。
原風景と聞いて思い浮かぶのは、千葉にあった祖父母の家の庭です。子どものころ、毎年お正月に実家の北海道から遊びに行っていたのですが、椿や蘇鉄など、北海道にはない植物がたくさん植わっていて、 非日常を感じる特別な場所でした。子どもの体には、その庭がとても広く感じて、ただよっていた香りなども覚えています。

お家のことついても聞かせてください。このお家に住んだ決めては?

もともと、静かな場所に住みたいと思っていました。大工の友人が手がけたこの家が完成したことをきっかけに、引っ越しを考えるようになったんです。
ただ、職場から遠いので通えるかが不安で、一度仕事終わりに試しに来てみました。駅から歩いている間は「遠い、遠い、絶対ここには住まない」と思っていたんですが、家に着いた瞬間、星がとてもきれいに見えて。坂の上にあるので音もほとんどなくて、その空気感がすごく好きでした。ここに毎日帰ってこられるならいいかもしれない、と思ったのが決め手です。

この家で気に入っているところはたくさんありますが、キッチンの窓から見える岩肌と植物の景色は特別です。こんな景色を毎日見られる家に住めることは、そうそうないかなと思います。庭が広くて、自分の好きな木や植物を自由に植えられること、海が見えることも魅力でした。
機能面では、キッチンに十分なスペースがあるところも好きです。鳥の声がよく聞こえるのも、この家らしさだと思います。

インテリアや暮らしの道具で、長く使っているものや、特別な思い入れのあるものはありますか?

食器は、出張先や旅先で買うことが多いです。使うたびに、「ここに行ったな」と、その時のことを思い出します。同じものを揃えるよりも、あえていろいろな柄を集めるのが好きです。

もうひとつ、長くそばにあるのは本です。実家にもたくさん本があるせいか、本がある空間が落ち着きます。
この家に入るときには、本棚を作ってもらいました。棚に使っている木は、以前住んでいた家で使っていた戸棚の扉を再利用したものです。

好きなお花はありますか?

いちばん好きな花は、チューリップです。
庭に植えて、咲いてくれたときは本当にうれしくて。毎年また出てきてくれるところも好きです。

好きな花や木は、庭にいろいろ植えてきました。レモンや紫陽花、オリーブ、百日紅、ライラック… 庭に植えたものは、どれも自然と思い入れがあります。自分より長生きするかもしれないと思うと不思議な気持ちになります。

花の定期便と一緒に枝の定期便も取っているのですが、それをきっかけに枝物の魅力にも気づきました。ドウダンツツジやユーカリ、アセビなど、ボリュームのある枝が届くと、お部屋の印象ががらっと変わるんです。中には、飾っているうちに根が出てくる枝もあって、それには驚きました。


実際に定期便を続けてみて、印象に残っていることや、暮らしの中で変化したと感じることはありますか?

自分で花屋に行って花を買うのとは、まったく違う体験だと思いました。
定期便というと「買いに行く手間が省ける」というイメージを持たれるかもしれませんが、それとは全然違って、花との付き合い方そのものが変わる感覚があります。

自分では選ばないような花や、花屋に行っても気づけないような花が入っていたり、少し早く季節を感じられたりするのも楽しいですね。

それから、誰かに花を贈るときにもお願いしやすくなりました。自分の暮らしや好みのイメージをわかってもらえているので、ざっくりしたオーダーでも安心して頼めるんです。

「自分専属の花屋さん」がいてくれるような感覚です。私にとっては、それが桜山植物園さんで、誰かに贈るときもきっと喜んでもらえるだろう、と思える。定期便を通して生まれる関係性のとてもいいところだと思います。

Ranunculus,
Sweet pea,
Rose geranium,
Acacia,
Gladiolus.

Text / Photography / Illustration by Sayuri Suda

毎月定期的に季節の植物をお届けしてます

フラワーロスを減らすための取り組みとして、定期便という形で、月1回または2回、ご自宅や店舗様へお花をお届けしています。春から秋にかけては、三浦半島の温かな気候と海風に育まれた花々を、季節の束に織り込んで届けています。